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「そいじゃあさ、おれ、待ってようか」
「…良いって、別に」
「だって本屋…」
「だから一人で行けって」
「待ってるって」
「だーかーらー!」
こうゆうところ。
丸で忠犬の如くお前が俺を待っているところ、それがそのあだ名を加速させているとどうしてこいつは気付かないのだろうか。
黙っていれば顔のいいこいつは、この男子校の中でも一目置かれていたりする。
そんなこいつを『狗』扱いしてると噂されれば(飽く迄、噂である。事実は全くもって違うのだから、)更に俺の『女王様』が広まっていく始末。
まったく、世の中よく出来てるよ。ほんとに。
そして、俺はそんな忠犬もとい狗もとい颯太に向かってしっしと手を振る。
「帰ってろって。俺も家帰ったら絶対メールすっから」
「…ぜったいだよ」
「忘れたことなんかあったかよ」
「……うん、ましろは忘れたことないよね」
ぽわんと、眠たいのか?と問いたくなるような甘ったるい声で颯太は言葉を綴り、満足したのか踵を返して玄関口へと向かった。
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