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雲雀恭弥に逢った僕は、冷静さを失いかけていた。
内に広がるのは、ただ「触れたい」と思う自分の心だけ。
「……骸?」
優しく呼ばれた僕の名前に、僕は肩を震わせた。
嫌だ、これ以上僕を乱さないでほしい。
先程まで人を咬み殺すだのなんだの言っていたくせに、不意打ちだ。
僕は必死に、笑みを浮かべて、言葉を紡いだ。
「クハ……何ですか、急に下の名で呼ばないで下さいよ」
「別にいいじゃない。僕の勝手でしょ。ぐだぐだ言ってると咬み殺すよ」
君には些細な事でも、僕には重要な事。
どうしようか、気付いてしまった。――否、気付いていたのに知らないフリをしていた。
それなのに君は、こんなに、僕を乱す。
君はなんて、
(残酷で優しい人間なんでしょう)
fin.
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