消霧

2/5
前へ
/79ページ
次へ
この気持ちは何だろう。 六道骸が姿を消してから、一ヵ月と少し経った。 僕は未だ骸を咬み殺せないまま。 黒曜ヘルシーランドで受けた屈辱を晴らしてやりたいというのに、本人が居なければどうすることも出来ない。 思い出す、僕を嘲笑う瞳。 僕を殴る事が心底楽しいのだという表情。 何でこんなに思い出すのだろう。 あんまりにも苛々するもんだから、紙にシャーペンで力強く文字を書いてしまって、ポキッと悲しく芯が折れた。 僕は仕事が進まず一人ため息を吐く。 書類は溜まっていくばかりで、一行に減らない。 もう、草壁に任してしまおうか……。 そう考えていたら、コンコンと応接室の扉を叩く音。 風紀委員だったらこの書類を纏めて押し付けてしまおうと思って、入りなよ、と声をかけた(勿論風紀委員で無ければ、このストレスを解消するために咬み殺す)。 ガチャリと扉が開くと、そこには見知らぬ女子がいた。 あの制服には見覚えがある。 多分だけれど、骸の通う黒曜中のものだろう(並盛以外興味ないから、基本的に覚えないんだよね)。 「……貴方が雲雀恭弥……?」 「……そうだけど」 弱々しく紡がれた言葉に、僕は気紛れに返事を返す。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

389人が本棚に入れています
本棚に追加