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「すみませんが、ラクス様。その命令には従いかねます」
「どうしてですか?」
「将軍の身分でラクス様にため口を使うなど、許されないからですよ」
優しく諭して、ラクスに部屋に戻るように言った。
だが、従うもわけなく……。
「今からジン様と一緒に何処に行くんですか?」
そう訊いてきたのである。
クロスがなんて言おうか迷っていると、隣で沈黙を守ってきたジンが教えた。
「今からラクス様の父上……陛下の所に行くとこです」
クロスは驚いて、ジンを凝視した。
何言ってんだこの野郎!!
そんな意味を込めた目付きで。
大概、ラクスはこのような場合、クロスに着いてくる。
それをクロスは分かっていたため、言おうか迷っていたというのに。
案の定ラクスは
「そうですか。それなら、わたくしもついていきますわ!」
そう言ってきたのだ。
額に手をやり、恨めしい気持ちで友を見る。
さっきの視線は気付かなかったくせに今回は気付いて、口パクで悪いと言った。
過ぎたことを悔やんでも仕方ないので、視線を今でも抱き着いたままのラクスに戻す。
「ですが、陛下が許さないかもしれませんよ?」
「大丈夫ですわ!最近の父は機嫌がすこぶるよろしいですから。
それに私を怒ったことなど、皆無に等しいですし」
そうだろうなとクロスは思う。
あの娘ベッタリの中年親父が、可愛い娘に怒ることなど天地が引っくり返るぐらいあり得ないのことで……。
その為、クロスは渋々首を縦に振るしかなかった。
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