第三夜 血飛沫の舞い

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答えない。 答えるだけ、時間の無駄だ。 そう考えたクロスは剣の嵐を止めることはない。 「──もうッ! 奥の手を使わなきゃ!」 カーネリウスがそう言うと空間がねじ曲がったような気がした。 目の前の景色、つまりカーネリウスの身体がぶれはじめ、そして消えた。 何となく彼女が行使した力の種類は解ったクロス。 慌てるまでもなく、ただ黙って剣を下げる。 「おい、どこに居やがる」 問い掛けるが返答するバカはいないだろう。 クロスは、宛もなく斬りかかるようなことはしない。 魔剣を鞘に戻して、更に地下に向かって足を進めていく。 「バカそうには見えないからな。逃げるなら、奥にだろう。しっかし、あの女、もしかして転移の術を……?」 自分で言いながら、あり得ないと否定する。 転移の術は、レベルニク創世記の文明と一緒に失われたはずだ。 「幻術だと思うんだがな……。だが、あの空間の曲がり方は……」 途中で言い止めた。 突如、暗闇の道が光に満ちたからである。 数百メートル先も見渡せるほど明るくなった。 そして、クロスが進んでいる道の先には扉があった。 不器用に切り出してある扉は明らかに誘っているようだ。 一回舌打ちしてから、足を動かす。 すぐに扉に着いたクロスは、迷わず扉を開けた。 剣を抜いて、足を踏み入れる。 「ようこそ、クロス。やっぱり来てくれたのね」 「俺が逃げると思ったか?」
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