第三夜 血飛沫の舞い

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「う~ん、それはないと確信してたわ」 部屋の中は一つだけ異様なところがあった。 それは、部屋の中心に魔術陣が描かれていたのだ。 円の中に、二つの三角形を上下で重ねるような造りである。 「それは…………魔術陣だよな?」 「そうよ。でも少しだけ違う。それはね──」 カーネリウスが言うのを止めて、錫杖に手を伸ばす。 すかさずクロスも、剣の柄に手を伸ばすがそれは杞憂に終わった。 ただブンと錫杖を振るだけで、カーネリウスは何もしなかったのだ。 「この魔術陣は重力によく反応するの。簡単に言えば、魔術陣の上に重力系の魔術を集めれば、空間は歪み、擬似的にブラックホールが造られるってわけよ」 「ブラックホール……ねぇ? ブラックホールってことは要するに、一度その空間の歪みに入ってしまったら二度と出られないだろ?」 「うん、そういう事よ。でもね、まだ私にブラックホールを造ることは出来ないの」 彼女は悲しそうに言った。 クロスはほっと胸を撫で下ろす。 いくらクロスといえど、ブラックホールに入って出てこれる可能性が殆どゼロに近いからだ。 「どうしてだ? もしお前がブラックホールを造ってしまえば、殆どお前は最強になれる」 「そうだけど、もし私がブラックホールを造るときに力を入れすぎたら、この世界はその強すぎるブラックホールに全て飲み込まれる。そんなのイヤでしょう?」
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