第三夜 血飛沫の舞い

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「ふむ、成る程、普通使えない術を使える女か」 「あの……族長さん……これからどうするんですか?」 レインが遠慮がちに訊いた。 クロスもそれは気になっていた。 他のドワーフは皆死んだのだ。 こんな広い地下空洞に一人で住むのは寂しいだろう。 「大丈夫だ。この砂漠には違うドワーフ部族が三つある。そこに行くさ」 「そこまで送っていきましょうか? 一人じゃ危ないですよ」 「いや、遠慮しよう。お主がアルテリスを封印させてくれたおかげで、だいぶこの砂漠も安全になった。一人だけで大丈夫だ」 「それなら、俺たちも弔ってからバリアスに行こうとするか」 クロスが発した言葉に、族長とレインが頷いた。 そして、三人は地下空洞の住宅地に着いて、斬り殺されているドワーフたちを丁寧に弔った。 クロスやレインはまだ良かった方。 今日もいつも通りの一日が訪れると思っていた族長は、込み上げてくる涙を止めることは出来ず、終始涙を流していた。 「じゃあ、俺たちは行くな。また会えるといいな、族長さん」 「ああ、いずれまた会えるだろう。女神が見守っているのだから」 「あの、お世話になりました」 弔いも終わり、クロスとレインは族長に別れを告げる。 族長は出来る限り元気に答えた。 「赤髪の剣士、金髪の剣士よ。また会おう。その時は多分、また騒動に巻き込まれるだろうがな」 二人はもう一度別れを告げ、地下空洞を出た。 途端、襲い掛かってくる日差し。 そして二人は重苦しい足を、踏み出した。
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