第一夜 導く先は

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「まぁ、いいではないか。 どうせ、ラクス様にも教えないといけなかったことだ」 「そりゃあ、そうだけど。 だからってなぁ」 「何のお話ですか?」 何も知らないラクスは可愛らしく首をかしげる。 そんなラクスにクロスは笑いかけた。 「もうすぐ分かりますよ。 陛下の元に行きましょうか。約束の時間が過ぎていることですし」 「そうなんですか。それなら急ぎましょう」 ラクスを離して、大広間に歩くのを再開する。 歩くのが速いジンとクロスに比べて、ラクスはトコトコと遅い。 二人は微笑しながら、ラクスの歩調に合わせて、大広間を目指した。 「遅いぞクロス、ジン! 時間を過ぎてから来るとは何事か!?」 開口一番にそう言われた。 大広間の奥にある豪華な椅子に腰掛けている年配の男が立ち上がった。 ラクスと同じ金髪、青い瞳。 この年配の男がサンワークを治める人物……ダレス・ユア・サンワークである。 「すいません、陛下。 少々、ラクス様とお話をしていたもので」 そう言い、膝を折り平伏するクロスに続いて、ジンも同じ姿勢をとる。 「ラクスだと。なぜラクスと」 「わたくしが話し掛けたのですわ、父上」 クロスの隣で凛として立っているラクスがダレスの言葉を遮った。 ラクスの存在を知ったダレスの目が見開いた。 「どうしてラクスが此所におるのだ?今の時間では寝ている頃であろう」 「父上。わたくしは17歳になりましたのよ。 もう子供ではありませんわ」
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