9151人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
ドワーフの族長と別れ、4日たった頃、赤い髪を靡かせている青年がふと顔を上げた。
そこには国境の砦があった。
鉄造りの壁が威圧感を放ち、思わず足をすくませる。
赤髪の剣士、クロスは副官のレインを連れて、砦の門にいる兵士に近づいた。
兵士もクロスに気付いたらしく、手にしていた槍を突き出してきた。
「何者だ!」
「あー、安心しろ。怪しいものじゃない。ほらっ、証拠だ」
クロスはミュラの砦の時のように、紙を取りだし、それを兵士に見せた。
兵士はそれはじっくりと読み、頭を下げる。
「失礼いたしました。サンワークの上将軍であられましたか。来た理由は、観光ではないですよね?」
「全然違うな。時間があればそれもしたいが、多分、できない──」
「僕たちは、王女殿下を探すために来たんだよ」
レインがクロスの言葉を遮り、簡潔に教えた。
兵士はまた頭を下げ、感謝の言葉を発する。
「わざわざありがとうございます。今から、女王陛下にお二人が来たことをお伝えしましょうか?」
「伝えるって、やっぱり魔力通信でか?」
「はい。すぐにお迎えがくると思いますが」
「いや、いい。城まで歩いていくさ。門を開けてくれないか?」
兵士のありがたい話を断り、クロスは頼んだ。
「はい…………あ、しまった」
兵士は口に手を当て、しまったと何回も呟いている。
どうしたのか気になったクロスは訊いてみた。
「おい、どうしたんだ?」
最初のコメントを投稿しよう!