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「あの……ソーサラーがいないんです」
「は?」
「ソーサラーがいないとこの扉は開かないんですよ」
兵士の視線の先には、大きな門があった。
年期を感じさせるような文字の配列に煌びやかな装飾、そして中央には魔術陣が描かれていた。
「……成る程な。魔術国ならではの仕掛けってやつだな。これなら魔術が使えないやつは入ってこれないのか」
「その通りです。しかし、いつもはただの旅人などを通したりするために、ソーサラーを一人居させているんですが、今日に限って休みなんですよ」
クロスはふーんと頷いた後、レインに命令する。
「よし、レイン。お前、ちょっと開けてこい」
「何で、僕っ? しょーぐんがやればいいじゃないですか」
「お前なぁ……上司をちゃんと敬いやがれ。ほらっ、お前の力ならすぐに開くだろ」
さっさと開けてこいと言わんばかりに、シッシッと手で払う動作をする。
レインは顔をしかめながらも、門の右端の方に置いてある機器に近づいた。
「あの……あの方はソーサラーなんですか?」
「ああ、まぁな。しかし、こんな大きい門を開けるには、相当な魔力が必要じゃないのか?」
「ええ、ですから此所に派遣されるソーサラーはエリートと呼ばれるんですよ。それぐらいじゃないと、この門は開きません。多分、あの方では──」
兵士の語尾が消える。
門が何の音もたてずに開いたのだ。
レインは気だるげに
「開きましたよーー、しょーぐん、行きましょう」
と手を振ったまま、そう言った。
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