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それから、驚いたまま固まっている兵士を無視して、二人は門を通った。
バリアス王国の王都は、ほかの国と比べて、比較的国境の近くにある。
その為、クロスとレインは半日かけて歩いた結果、夕日がオレンジ色に照らしている美しい街が見えてきた。
外壁がないのか、中の街の様子がはっきり見てとれた。
「綺麗ですね……、なんか夕日と街がマッチしてます」
「ああ、バリアスに来たのは初めてだが、いい国のようだな」
レインの言葉にクロスはそう返した。
確かにレインの言う通り、街にそびえ立つ白い家に夕日が反射して、綺麗だと思う。
しかし、それ以上にクロスがこの国で感心したのは、治安の良さだった。
王都に来るまでに何回も、町や村を通ったが何処でも人々は笑っていた。
犯罪などとは無縁のように。
そんな国で、王女が誰かに拐われるという事件が起きた事が信じられなかった。
「どうしたんですか、しょーぐん?」
レインが声を掛けてきた。
思案を止め、頭を小さく横に振る。
「いや、何でもない。暗くなる前に宿を探さねぇとなと思っただけだ」
「ええ? 普通の宿に泊まるんですか? 城に泊めさせて貰いましょうよ」
我が儘を言う部下の頭を軽く殴る。
クロスは歩き出し、王都の入り口にいる屈強そうな門兵を見て、もう一度、豊かな国だと思った。
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