第四夜 王女の行方……そして激動へ

4/53
前へ
/256ページ
次へ
それから、驚いたまま固まっている兵士を無視して、二人は門を通った。 バリアス王国の王都は、ほかの国と比べて、比較的国境の近くにある。 その為、クロスとレインは半日かけて歩いた結果、夕日がオレンジ色に照らしている美しい街が見えてきた。 外壁がないのか、中の街の様子がはっきり見てとれた。 「綺麗ですね……、なんか夕日と街がマッチしてます」 「ああ、バリアスに来たのは初めてだが、いい国のようだな」 レインの言葉にクロスはそう返した。 確かにレインの言う通り、街にそびえ立つ白い家に夕日が反射して、綺麗だと思う。 しかし、それ以上にクロスがこの国で感心したのは、治安の良さだった。 王都に来るまでに何回も、町や村を通ったが何処でも人々は笑っていた。 犯罪などとは無縁のように。 そんな国で、王女が誰かに拐われるという事件が起きた事が信じられなかった。 「どうしたんですか、しょーぐん?」 レインが声を掛けてきた。 思案を止め、頭を小さく横に振る。 「いや、何でもない。暗くなる前に宿を探さねぇとなと思っただけだ」 「ええ? 普通の宿に泊まるんですか? 城に泊めさせて貰いましょうよ」 我が儘を言う部下の頭を軽く殴る。 クロスは歩き出し、王都の入り口にいる屈強そうな門兵を見て、もう一度、豊かな国だと思った。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9151人が本棚に入れています
本棚に追加