第一夜 導く先は

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異世界を形成する大陸──『ケルアリキア』の北東部に位置している国であるサンワーク。 その王都のある一角のガヤガヤとうるさい酒屋の中に、一人の赤髪の青年がご飯を食べていた。 青年の風貌は顔だけ見ると、そこら辺にいる同年代の人々と変わらないが、腰の辺りを見るとそう思えなくなる。 やけに装飾の凝った鞘が携えられていた。 更に、黒色のズボンのベルトには、刃渡りの短いナイフと銃があった。 戦の多い時代とはいえ、護身用にこれ程の装備は要らないはずである。 ガヤガヤ、ザワザワ、ワーワー。 時はちょうど、午後九時にさしかかった辺り。 人の行き来も最高潮に達していた。 その為、酒屋の中のざわめきも騒音になり、店の外まで響いている。 そんな中で、青年は一人黙々とご飯を食べ、牛乳を飲んでいた。 変な奴だなぁ。周りはそう見ていたが、青年はそれに気付いていないのか、ご飯を食べ終わり、牛乳を飲み干して、席から立ち上がった。 「店主。金はここに置いてくぞ」 テーブルの隅に銀貨を五枚置いて、店から出ようとしたが、四人の男に止められた。 顔が赤くなっているのを見る限り、酔っているのがわかる。 「何だよ?」 不機嫌まるだしの声で青年が訊いた。 自分よりも背の高い男たちに、恐れる感じはなく、逆に挑発している感じぐらいする。 男たちはそれを感じ取ったのか、こめかみに青い筋を浮かべた。 「おい、クソガキ!酒屋ってのはな、酒を飲んで、皆でワイワイ騒ぐとこなんだ。知ってんのか!?」
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