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ゼブラリタルに着くと、城門にスーツを着て、サングラスをかけている華奢な男が立っていた。
男は手を挙げて、こっちに来いと手招きをする。
それに気付いた青年は、不思議そうに首を傾けながらも男に近寄った。
「どうしたんだよ、ジン。
おまえも陛下に呼び出されたくちか?」
ジンと呼ばれた男は、サングラスをクイッと指で上に持ち上げた。
「おまえと一緒にするなよクロス。
俺は、おまえなんかとは違って命令には逆らわないからな。
そんなことより、今しがた緊急の情報が手に入った」
クロスは苦笑しつつも、先を促せる。
人を焦らすのが好きなところがジンの悪い癖である。
「それで、緊急の情報って何だよ?」
「中原に位置しているバリアス国の王女様がいなくなったらしい。
国民はまだこの事は知らないが」
目を見開いて驚くクロスに、ジンは肩をすくめた。
「おまえが驚くのも無理はない。俺も聞いた当初は驚いたからな。
バリアス国と我がサンワーク国は友好関係にあるから、当然誰かが探しに行かないといけないな」
「いや、サンワークとバリアスは友好関係にあるが、距離が離れ過ぎてる。
どうやってそこまで行くんだよ?」
「それを今から陛下が教えてくれるんだろ。焦るなよ」
ジンの言葉に露骨に嫌な顔を面に出した。
クロスは口を尖らして言った。
「陛下がぁ?嫌な予感がするんだけど、これは俺の勘違いかな?」
「勘違いではないだろう。
俺も同じ予感がするのでな」
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