第二夜 幕は上がり始める……

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「ホントにただでくれるのか?」 「良いんですか、リユールさん?」 クロスとバリスが同時にそう言うと、リユールはおもむろに首を縦に振った。 「勿論。……だが、一つお願いがあるんだが」 「お願い?」 クロスがおうむ返しのようにそう訊いた。 リユールは一旦店の奥に行き、数分してから戻ってきた。 手には水晶玉が握られている。 「何だ、ソレ?」 「これは、あるモノを封印するものでな。ドワーフたちに返さなければならない筈のものだ。貴様ら、砂漠を横断するんだろう? そのついでにドワーフたちに、これを返してもらいたいんだ。いいだろう?」 クロスは少し悩んでから、了承した。 ──どうせ、通り道だし、いいだろう。 「まぁ、構いやしないが……何で、俺たちが砂漠を横断すること知ってんの?」 「さっき、コイツに聞いた」 人差し指をバリスに向けるリユール。 バリスはあははと笑いながら、説明した。 「いや、おまえら、明日から砂漠に行くんだろう? 俺は前々から、この水晶玉の話は聞いていてな。だから、おまえらが砂漠を横断するのを知ったとき、好都合だと思ったんだ」 違和感。 胸の奥に何かがつっかえている。 クロスは昨日の夜、今日の朝、今までのバリスとの会話を思い出したが、一回も砂漠を横断するなんてことを話していない。 ──なのに、何故、バリスは俺たちが砂漠を横断するのを知っているんだ? 賢明なものなら、まず選ばない砂漠の道。 クロスは、喉まで込み上げてきた疑問をなんとか飲み下し、平静を保つことにした。
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