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「ホントにただでくれるのか?」
「良いんですか、リユールさん?」
クロスとバリスが同時にそう言うと、リユールはおもむろに首を縦に振った。
「勿論。……だが、一つお願いがあるんだが」
「お願い?」
クロスがおうむ返しのようにそう訊いた。
リユールは一旦店の奥に行き、数分してから戻ってきた。
手には水晶玉が握られている。
「何だ、ソレ?」
「これは、あるモノを封印するものでな。ドワーフたちに返さなければならない筈のものだ。貴様ら、砂漠を横断するんだろう? そのついでにドワーフたちに、これを返してもらいたいんだ。いいだろう?」
クロスは少し悩んでから、了承した。
──どうせ、通り道だし、いいだろう。
「まぁ、構いやしないが……何で、俺たちが砂漠を横断すること知ってんの?」
「さっき、コイツに聞いた」
人差し指をバリスに向けるリユール。
バリスはあははと笑いながら、説明した。
「いや、おまえら、明日から砂漠に行くんだろう?
俺は前々から、この水晶玉の話は聞いていてな。だから、おまえらが砂漠を横断するのを知ったとき、好都合だと思ったんだ」
違和感。
胸の奥に何かがつっかえている。
クロスは昨日の夜、今日の朝、今までのバリスとの会話を思い出したが、一回も砂漠を横断するなんてことを話していない。
──なのに、何故、バリスは俺たちが砂漠を横断するのを知っているんだ?
賢明なものなら、まず選ばない砂漠の道。
クロスは、喉まで込み上げてきた疑問をなんとか飲み下し、平静を保つことにした。
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