9151人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
「レイン……耐えろ……っ」
それしか言えないことに、苛立つクロス。
しかし、レイン自身が乗り越えないことには、魔剣を掴むことはできないのが事実。
故にクロスはただ、眼を瞑り、レインの魔剣造りが終わるのを待っているのだ。
「グガガガァァァァアァ……」
「……ッ!?」
頭上から迫り来る凶器を察して、咄嗟に後方に跳躍して避ける。
前を見ると、鈍く鮮血に濡れているかのような剣を構えるレインの姿があった。
「……クソッ、ヤバイな」
「ウゥゥ……ガッ!」
まるで獣のよう。
低い姿勢のまま突進してきて、地を這うような位置から剣を振り上げてくる。
身体の軸を半歩ずらす。
その数少ない動きで避け、クロスはレインの手、つまり剣を蹴撃した。
魔剣と思われる剣は、空中で何回か回転したのち、数十メートル離れた地点に突き刺さる。
「……おい、レイン!」
「…………」
「クソッ、魔剣造りは大体完成してるっつぅのに!」
呼び掛けても反応のないレイン。
クロスは力づくで眠らせるしかないと考え、今度は此方からレインの間合いに入る。
昨日の夜のように、魔力を体内に流して、無理矢理身体を就寝状態にもっていかせる。
手をレインの胸に置き、力を込めようとしたとき、レインの手がクロスの腕を掴んだ。
最初のコメントを投稿しよう!