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「チィ……だが、これでっ!」
気にせずに力を込めるが、それもいつもの陽気な声と共に消え去った。
「しょーぐん、僕ですよ。
……って、聞いてます!?」
「……──ああ、聞いてるぜ。……良く意識を取り戻したな」
相当驚いたようで、クロスはレインの声を聞いても、手を動かせなかった。
クロスが驚くのも無理はない。
まず、魔剣造りで一度でも意識を手放した者は、自力で意識を回復できるやつはいない。
魔力の扱いが、他の種族とかけ離れて上手い『エルフ』なんかは、自分の体内で魔力を活性化させ意識を取り戻すことができるが、人間や竜人なんかでは、不可能に近いのだ。
「なんか、声が聞こえたんですよ……。起きろ、コラッ!的な」
「ハァ?」
「いや、ですから! しょーぐんみたいな声の人が、僕の耳元で、起きろ、コラッ!て叫んでるような感じがして、それでなんとなく起きるイメージをしたら、目の前にしょーぐんがいて……」
レインの説明に、クロスはただ苦笑いする。
なんという、意味不明な理由だ。
とんでもないことをしたのに、その凄さも、今の説明で半減したな……。
「まぁ、お前が無事なら何でも良いや。……それより、剣ならあそこにあるぞ」
自分が吹き飛ばした剣を指差す。
紅き光芒を放つ魔剣は、使い手を求めているようだ。
レインは今さらになって、そのことを思いだし、満面の笑みで魔剣を地面から引き抜いた。
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