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レインの魔剣も無事に造り終え、クロス達はミュラの街を出ることにした。
日はまだまだ人々を照らせる位置にある
ミュラの街の出口は、そのまま砂漠と繋がっていて、見通しもよい。
あまりの砂漠の広さに、いささか不安になってきたりするが、それを表には出さず、出口までついてきたバリスにお礼を述べる。
「泊めてくれてありがとな。この任務が終わったら、また顔を見せにくるから……」
「ああ、待ってる。じゃあな、クロス、レイン」
「ありがとうございましたバリスさん。奥さんに宜しく言っといてください」
レインがそう言った途端、バリスの表情に影が差したが、すぐに元の表情に戻り、頷いた。
「ああ、また美味しい料理を作らせて、待っとくからな。いつでも来いよ」
「じゃあ、馬は頼むぜ、バリス。……よし、行くぞレイン」
「はいっ!」
元気良く返事し、レインはクロスと一緒に砂漠という困難な道のりを歩み始める。
それを見送るバリスの後ろに、一人の黒いローブを羽織った、銀髪の男が立っていた。
クロス達が歩み始めた瞬間に、姿を表したようで、クロス達はその存在に気づかなかったようだ。
「計画通りだな……バリス」
「あんたの言う通り動いたぞ。妻は無事なんだろうな!?」
「勿論。だが、私の命令に逆らえばどうなるか……分かっているな?」
「分かっている。…………すまない……クロス」
友に呟いたその声は、余りにも小さく、そして儚いものだった。
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