第三夜 血飛沫の舞い

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神聖ラザルア帝国。 ケルアリキア大陸の南西部に位置していて、大陸一の強大国である。 軍事力では、複数の国を一度に相手に出来るほど。 その国は、約一年前、帝王が代わった。 穏やかで平和を願っていた前帝王は、殺戮と戦乱を望む帝王に殺されてしまったのだ。 主城も、外装から内装までがらりと変わり、より戦闘向けになっている。 その城──リオル城の薄暗い廊下で、誰かが歩いている。 カツカツと音を立て、先を急いでいるかのようだ。 銀髪を背中辺りで一本に束ねていて、精悍な顔立ちをしている男性である。 「陛下! 待ってください陛下!」 「何だ?」 後ろから、白髪の老人が追いかけてきた。 陛下と呼ばれた男はチラッと老人を見る。 「何かあったのか?」 「陛下……今までどこに行っていたのですか? 私一人ではあの者たちを押さえつけることはできません!」 息を切らし、必死に訴える。 余程参っているようだ。 「私が留守中にアイツラが何かしたのか?」 「はい! 勝手に囚人たちを修練場に連れていき、有無を言わさず殺したのです! 優に五十人以上をですよ!」 「…………フム、お前はそれを見ていたのか?」 意外な質問に老人は一瞬キョトンとしていたが、すぐに返答した。 「は、はい! 間近で見ていましたが?」 「そうか……。それで? 奴等は今どこにいる?」 「おそらく、部屋で寝ていると思いますが……」
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