9151人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
神聖ラザルア帝国。
ケルアリキア大陸の南西部に位置していて、大陸一の強大国である。
軍事力では、複数の国を一度に相手に出来るほど。
その国は、約一年前、帝王が代わった。
穏やかで平和を願っていた前帝王は、殺戮と戦乱を望む帝王に殺されてしまったのだ。
主城も、外装から内装までがらりと変わり、より戦闘向けになっている。
その城──リオル城の薄暗い廊下で、誰かが歩いている。
カツカツと音を立て、先を急いでいるかのようだ。
銀髪を背中辺りで一本に束ねていて、精悍な顔立ちをしている男性である。
「陛下! 待ってください陛下!」
「何だ?」
後ろから、白髪の老人が追いかけてきた。
陛下と呼ばれた男はチラッと老人を見る。
「何かあったのか?」
「陛下……今までどこに行っていたのですか? 私一人ではあの者たちを押さえつけることはできません!」
息を切らし、必死に訴える。
余程参っているようだ。
「私が留守中にアイツラが何かしたのか?」
「はい! 勝手に囚人たちを修練場に連れていき、有無を言わさず殺したのです! 優に五十人以上をですよ!」
「…………フム、お前はそれを見ていたのか?」
意外な質問に老人は一瞬キョトンとしていたが、すぐに返答した。
「は、はい! 間近で見ていましたが?」
「そうか……。それで? 奴等は今どこにいる?」
「おそらく、部屋で寝ていると思いますが……」
最初のコメントを投稿しよう!