第三夜 血飛沫の舞い

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男は来た道を引き返し始めた。 それを老人が追う。 「成る程な……。奴等にだいぶストレスと不満が溜まっているらしい。……今度からは気を付けろよ、ギレス」 「どういう意味でございましょうか?」 ギレスと呼ばれた老人は、男の歩くスピードに置いていかれないように、若干走りながら尋ねる。 男は口許に笑みを溢し、楽しそうに、 「下手をすれば、お前が殺されてしまうことになるぞ。元々、此所には無理矢理連れてきたようなものだからな」 「そ、そんな……でしたら、アイツラの監視役を変えてください! 私よりもっと屈強な者たちはいるでしょうっ?」 「そう怯えるなギレス。お前は奴等には殺されぬさ」 「何故ですか?」 ピタッと男が立ち止まる。 そして、ゆっくり後ろを向き、背中に掛けてある大剣を抜いた。 薄暗い廊下でさえ、光放っているその刀身はまさに魔力の輝き。 蒼いその光は、ギレスの顔を照らす。 「な、何をお考えなのですか、陛下!?」 ギレスが喚く。 唾を四方に飛び散らせ、うるさく……。 「安心しろ……ギレス」 「へ、陛下……」 「そのうるさい口が今後一切開かれることはない」 風切り音が鳴る。 と同時に、ギレスの首が鈍い音をたて、地面に落ちた。 鮮血が噴水のように吹き出すのを、甘美な表情で見つめる男。 彼こそが……神聖ラザルア帝国、現帝王ジェリス・シュア・ギル。 ケルアリキア大陸に、混乱を巻き起こした張本人。 そして、その動乱を大きくしていく者。image=246339110.jpg
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