9151人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
男は来た道を引き返し始めた。
それを老人が追う。
「成る程な……。奴等にだいぶストレスと不満が溜まっているらしい。……今度からは気を付けろよ、ギレス」
「どういう意味でございましょうか?」
ギレスと呼ばれた老人は、男の歩くスピードに置いていかれないように、若干走りながら尋ねる。
男は口許に笑みを溢し、楽しそうに、
「下手をすれば、お前が殺されてしまうことになるぞ。元々、此所には無理矢理連れてきたようなものだからな」
「そ、そんな……でしたら、アイツラの監視役を変えてください! 私よりもっと屈強な者たちはいるでしょうっ?」
「そう怯えるなギレス。お前は奴等には殺されぬさ」
「何故ですか?」
ピタッと男が立ち止まる。
そして、ゆっくり後ろを向き、背中に掛けてある大剣を抜いた。
薄暗い廊下でさえ、光放っているその刀身はまさに魔力の輝き。
蒼いその光は、ギレスの顔を照らす。
「な、何をお考えなのですか、陛下!?」
ギレスが喚く。
唾を四方に飛び散らせ、うるさく……。
「安心しろ……ギレス」
「へ、陛下……」
「そのうるさい口が今後一切開かれることはない」
風切り音が鳴る。
と同時に、ギレスの首が鈍い音をたて、地面に落ちた。
鮮血が噴水のように吹き出すのを、甘美な表情で見つめる男。
彼こそが……神聖ラザルア帝国、現帝王ジェリス・シュア・ギル。
ケルアリキア大陸に、混乱を巻き起こした張本人。
そして、その動乱を大きくしていく者。![image=246339110.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/246339110.jpg?width=800&format=jpg)
![image=246339110.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/246339110.jpg?width=800&format=jpg)
最初のコメントを投稿しよう!