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「やはりワシの拳で蹴りを付けてやぁ、うお?!」
「じいちゃん!」
拳四郎が意気込みを口にした瞬間、鬼々蜘蛛の口から蜘蛛妖怪と言えば蜘蛛妖怪らしい粘着性の白い糸が大量に吹き付けられた。
「ぬおおぉぉ、なんじゃこりゃ、動きが!」
鬼々蜘蛛から吐かれた大量の粘着糸で、超人の動きを完全に封じてしまった。
ベトベトの大量の糸に自由を奪われた拳四郎は、取り餅に掛かった鳥のように地面でバタつく。
その様子から脱出は、不可能に見えた。
「キィキィキィキィィーーーー!」
村人サイドのエースを封じた鬼々蜘蛛は、さらに粘着糸で村長を襲う。
「いゃぁぁぁぁぁぁ!」
だが、今度は動きを封じるだけではなく、そのまま村長を粘着糸で自分のほうに引き寄せた。
すると村長は、地面に爪を立てながら女々しい悲鳴を上げ鬼々蜘蛛のほうに引きずられていく。
村長は抵抗虚しく、あっと言う間に鬼々蜘蛛の目の前まで引き寄せられた。
「村長!」
「キィキィキィキィーー、ハグハグハグ」
「あぁぁ!、喰った!」
「村長が食われた!」
頭から丸呑みであった。その後景を見ていた村人たちが唖然とする。
仕方あるまい。人が化け物に食われる瞬間など、普通の人生では決して目にすることが無いだろう。
ましてや、それがよく知った知人ならば唖然ともする。
しばらくして村長を喰らった鬼々蜘蛛に異変が見られた。
わずかにカタカタと震えたかと思うと、背中の辺りにニョキニョキと何かが生え始める。
それは見る見るうちに人の形をとり始めると、先ほど喰われた村長の上半身の姿へと変った。
「村長さんだ!」
「死んで無かったのか!」
「ちっ」
「今舌打ちしたの誰だ!?」
鬼々蜘蛛の背中から生えた村長が、不気味な怖声で語り始めた。
「キィキィキィキィィィ、小ざかしや人間どもが、調子にのりおって、全員食ろうてやるわぁぁぁぁ」
村長の目は虚ろで、口からは涎を垂らし、肌はハゲた頭のてっぺんまで紫色に変色していた。
そして額には緑色の血管を何本も浮き立たせ、何故か乳首には星型のキラキラとした二ップレスを付けていた。
村長は、僅か一点を除いて亡者そのものの風貌であった。
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