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拳四郎の連続攻撃。
下から鬼々蜘蛛の顎を蹴り上げた蹴り。
そして浮いた巨体を引戻すかのように打ち下ろす肘鉄。
ちょうどいい高さに戻って来た鬼々蜘蛛の顔面に向けて右左の連続中段正拳付きを叩き込む。
更にとどめとばかりに、一呼吸分の力を貯めた強烈な正拳付きをぶちかました。
「フゥギィィィィィィィィーーー!!」
拳四郎の強烈な連続攻撃に、悲鳴を上げる鬼々蜘蛛。
撃たれた顔面を庇うかのように八本の足をばたつかせた。
その無造作に振り回された丸太のような足に、巻き込まれんと拳四郎も慌てて後ろへと下がった。
「利いてるぞ!」
「やれるのか」
「皆、いっせいにかかるぞ!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉ!」
「とりゃーーー!」
拳四郎の攻撃に勝機を見出した村人達。今度は掛け声と共に一斉に飛びかかった。
「キィキィキィキィキィィィィィ、小ザカシヤアアア!」
鬼々蜘蛛は奇声と共にその巨体をまるでドリフトするスポーツカーのように回転して、飛びかかる村人達を力任せに次々と弾き飛ばす。
「どわわぁぁ!」
「ぐほぉ!」
プロレスラーに飛びかかった子供のように弾かれた村人達は、地面に叩き付けられ苦痛の表情を浮かべた。
「いてぇ~……!」
「折れた折れた!」
「ちっ、なんてパワーだ!」
「誰か怪我人を離れた場所へ!」
周りの状況を冷静に判断した村長が、的確な指示を村人達に飛ばす。
「皆の衆、この化け物を侮るな!」
村長に続き、先に有効打を見せた拳四郎もまた、村人に檄を飛ばした。
「キィキィキィキィィィィィ、人風情ガ小ザカシヤ!」
「もしかしてこいつ、それしか言葉をしゃべれないのか!?」
鬼々蜘蛛のドリフト攻撃を紙一重でかわしていたタケシが、鬼々蜘蛛のかわいそうな事情に見事に気づくとそう言った。
「キィキィキィキィィィィ……、コ、コザカシヤ……」
再び奇声を上げる鬼々蜘蛛の叫ぶトーンは、明らかに下がっていた。
「やっぱり昆虫は昆虫なのね、思ったより頭良くないんだ」
気づかれた真実に陽子が追い討ちをかけると、それはもう悲しき悲鳴にしか聴こえなくなっていた。
だが、鬼々蜘蛛の見せたドリフト攻撃で受けた村人達のダメージもまた、かなり深刻だった。
多くの村人が手傷を追い、何人かは自力で歩くことすら出来ない様子である。
村人サイドの戦力低下は見て取れた。
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