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「キィキィキィキィィィィ、貴様らの中で一番賢そうな者を取り込んでやったぞ。本体の口では人語は、言いずらくてしかたないからな~」
背中に生えた村長が、どうやら鬼々蜘蛛のしゃべりを代弁しているようだ。
「そんなバカな!」
鬼々蜘蛛の言葉に、声を抗えたのは警視総監の杉原であった。
この中で一番賢そうなのが自分ではなく、村長だと言う鬼々蜘蛛への抗議なのだろうか。
「村長さん……」
「キィキィキィキィィ、あのジジイの拳は多少効いたが、それでも人間風情に遅れを取るワシではないは!」
鬼々蜘蛛はそう言うと、今度は村長の口から粘着糸を戦車の砲台の如く、四方八方に吐き散らかす。
「うわぁ!」
「ちきしょう、動けん!」
次々と村長の吐く粘着糸に捕らえられていく村人達。
そんな中、鬼々蜘蛛のドリフト攻撃で肩を痛めた雅史が、境内の隅に生えた大きな木の陰に隠れていた陽子のそばに駆け寄って来た。
「陽子ちゃん、ここはもうヤバイ、君は逃げなさい」
「でも……」
鬼々蜘蛛の粘着糸を回避しつつ、尚も攻撃の機会を狙っているタケシの背中を、陽子は心配そうに見つめた。
タケシを置いて一人で逃げるなんて彼女にはとても出来る行動ではない。
「キィキィキィキィィィ、愉快なじゃ、愉快じゃ、取り放題じゃ、絡め放題じゃwww」
「むむむ……、春婆怒様……なぜ、約束を……」
粘着糸に動きを封じられている拳四郎が、悔しそうな表情でそう呟く。
そして目線を、神社の本堂の陰で隠れている神主の方へと向けた。
その神主もまた、手にした長槍を強く握り締め、鬼々蜘蛛の暴れ回る姿を歯がゆく睨んでいた。
「何故です、早ようお目覚めあれ、春婆怒様……くぅぅぅ」
神主は、手の中にある鋼の長槍に、そう語りかけた。
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