< 春婆怒 >

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 一方、鬼々蜘蛛と対決を繰り広げている村人の数も、時が過ぎるにつれ、また一人、また一人と鬼々蜘蛛の粘着糸に捕らえられていく。 「キィキィキィキィィィィ、直ぐには殺しはせぬぞ、直ぐには殺しはせぬぞ、捕らえてから体液だけをチューチュー食ろうてやるわ!」 「にゃろう、でかい虫けらのくせに!」 「ええぃ、かくなる上は、ワシがこの手で!」  仲間のピンチを見ていられなくなったのか、物影に隠れていた神主が姿を現し手にした長槍を構えた。 「鬼々蜘蛛ぉ、ワシが相手だぁぁ!」  神主は震える足で、鬼々蜘蛛にそう叫んだ。 「んん~、キィキィキィィィ。それは、その槍は、もしや、もしやして!」 「神主さん!」 「キィキィキィィィィ、春婆怒か!、なるほど五十年間ワシを封印していたと思えば、まだ目覚めてもいなかったのか。キィキィキィキィィィ、この騒ぎでも尚、姿を見せぬわけだわい!」 「カンちゃん、今は引け、逃げるんだ!」  地に転がる拳四郎が神主に叫ぶ。 「キィキィキィキィィィィ、所詮は九十九神、使い手が居なければ、ただの鉄クズじゃわい。キィキィキィキィキィィィ人間ごと、踏み潰してやるわ!」  ドドドドドッと、土煙を上げながら、本堂の前で震えながら槍を構える神主目指して、鬼々蜘蛛が突進を始めた。 「神主さん、避けろ!」 「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  神主は、突進して来る鬼々蜘蛛に対して、手に有る長槍を突き立てた。
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