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男、叉之伍郎は服の裾を引っ張り、シモンを宥めさせる。時に頭を撫で、時に微笑みかけ。
当のシモンは漸く辺りを左見右見。
道行く此の奇怪劇な二人を影ながら眺め、触れぬが仏と通り過ぎる。其れも老若男女。
今更ながら羞恥心が込み上げ、赤面するシモン。かっかっと笑う叉之伍郎。
「ほうら見なさい」
「あああ・・・・・」
気の抜けた声。
裾で顔を隠すも、隠し切れない顔の隙間から零れる。気を使っているつもりなのか、隣でパタパタと扇子で扇いでやる叉之伍郎。
恥ずかしさのあまり、ちょっかいを出す気力さえないシモン。
そんな光景を見ていた犬が、やたらワンワン鳴いていた。
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