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っといった具合になる。
「自分で呼び出しておきながら来ないとは・・・・」
下町から離れた都の茶屋で二人、店内の個席に座る。
「かっかっ、すまないねぇ。すっかり忘れてたよ」
番茶を啜り、全く詫びの感情の無い様子の叉之伍郎。向かい椅子に、すっかり泣き叫んだ名残が消えたシモンが珈琲を啜り、ブツブツ愚痴を叩く。
「で、あっしをあんなに待たせるとは。そんなに大事な野暮用か」
「そうそう!!どうしても君に伝えたかったのだよ」
待ってましたと言わんばかりに、いや待たせたのはこちらか、叉之伍郎はテーブルをバシッと叩いた。
意気揚々とする叉之伍郎の様子に唖然とするシモンに見向きもせず、叉之伍郎はポケットから西陣織財布を取り出し、其こから更に薄い紙切れを取り出し、テーブルに置く。
「何だこれ」
「今日拾ってきた種さ」
写真である。モノクロの。
古ぼけた振り子時計の写真だ。
何て事は無い、下町の裏へ行けばゴロゴロ廃棄されている物と同じだ。
どう?と叉之伍郎が目で語るも、シモンは何も答えられない。
「ただの時計か」
「なんだねシモン君。僕が単なる時計を見せに来ると思うかい?」
「ああああ、ないなないな。有り得ないな。」
一々面倒で捻くれ者だ!!
グチグチと叫び出したくなるシモンだが、一先ず落ち着く。
「じゃあ何だ」
「此れはある屋敷で撮影してもらったんだよ」
「うん」
「事件が起こった現場の唯一残った遺留品なんだよ」
「は」
シモン
今、思い出した。
叉之伍郎は
探偵だった。
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