美月の帰り

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佐上叉之伍郎。 都で私立探偵を営む、 通称‘灰被れの叉之伍郎’。 都や下町界隈中の警官隊に知らぬ者などいない程顔が知れた、一人の変わり者である。 これまで幾多の事件を解決に導いてきた立役といった、此の男には不釣り合いな経歴を持ち合わせているが、どうもしっくりいかないのは、彼の人柄にあった。 庶民、特に下階級の者隊に人気という事あってか、此の‘灰被れ’下町の排気工場からの煙で汚れた男という意味合いで通っているそうだ。 庶民の中では名探偵と待遇良くされているそうだが、名が迷惑の迷に変わる事を祈る者もいる。 それはシモンも含め、少なくない数。
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