美月の帰り

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「全く以て嫌になるよ、この叉之伍郎という男・・・」 「そうは言っても、ちゃあんと待っていてくれたではありませんかシモン君」 涙混じりにニコリと微笑み、ズビーとまたひとかみ。 あぁぁぁまたこの!! と激情するも、店主の視線痛く断念。 警察官にあるまじき云為ぞシモン 何と端なき事を。 そう心に言い聞かせ、無理矢理心情を落ち着かせる。 「貴方が探偵という職種にいなきゃあ、あっしはのこのこ付いて行きやせんよ」 「かっかっ、そうでした、そうですね」 其の時には此の叉之伍郎、涙の事などケロリと忘れ、御丁寧に、ぐしゃぐしゃのハンケチを折り畳んでいらっしゃるではないか。 此れにもシモンは頭をピリピリとさせたが、仕方が無い諦めよう、と落ち着く始末。 「で!!元の話に戻ろうじゃあないか」 「えぇえぇ、そう致しましょう」 その前に、さぁさぁ、借りたハンケチをどうぞ と丁寧に畳まれた鼻かみハンケチを差し出す。 此れには下町お巡りシモン君、何も言わずに。 此のニコニコと笑う探偵に一発、鉄槌を喰らわせた。 店主が見て見ぬフリをしたのは、他の御客以外誰もいない。
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