美月の帰り

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-死亡推定時刻は申の刻から酉の刻。第壱発見者は彼女のメイド。大体戌五つ時に夕食を珈頭黎已奴嬢さんに運んで行った際に発見。 古びた青朽葉の雑記帳を取り出し、隅から隅まで話す。 腫れるぞ腫れるぞ、と殴られ傷に話しかけながら。 併し其の話し相手のシモン君、全く聞いちゃあいないの知らん顔で。涼しい顔して何杯目かの珈琲を啜っている。 「おやおや、まだ機嫌を損ねているのかい?」 「それもあるが、あっしにソイツを話して何になるか?」 不機嫌の一点張りで、人が増えつつある外を眺めている。その横顔はタイトル「憂鬱な午後」といった、まるで油絵のような一面。 「・・・というと?」 「あっしは下町お巡りさん。都の話に聞く耳など持たないさ」 「おやおや、そうかいそうかい」 いやね、都の治安の悪さはきらびやかな風景の裏に流るる美しき調べ。 都の警官は常に引っ張り凧さ。 其の酷さには警官の数足りず、下町にも手を出す始末。 こんな大きな事件なら、何処にでも唾付け出すだろう。 「そう思っただけでね」 「そいつぁ検討違いさ。他当たりなよ」 しっしっ、と駄犬でも追い払うのかシモンよ。 違うよ、こりゃあ 問題に介入しちゃあなんねぇ。 なんせこいつぁ‘灰被り’。 触っちゃなんねぇ、尋ねちゃなんねぇ。 見えるのは灰ばかりさ。 だろうね、叉之伍郎。
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