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絡繰り時計が動き出した。
華奢なバレリーナがクルリクルリ回り、周りを様々な身分の男達が囲って回る。
何を意味しているのかは、大人達だけが知っていた。
キタキタキタキタキタキタ
一回りして
キタキタキタキタキタキタ
二回りして
キタキタキタキタキタキタ
散々回りあかすと、突然ガクンと時計の奥にすっこんだ。
またも静寂。
ヒグラシの遠音が鳴り出す。
が、珈頭黎已奴は追わなかった。
もう6時だ。
お母様がお夕ご飯を持ってくる。
あと少しの時間から。
夕日がカーテンを通り越し、珈頭黎已奴の青いセルロイドを濡らした。
不思議な色になった。
静寂の物寂しさとは違うものを感じたのは、ヒグラシだけだった。
もうすぐ
お母様が
お夕ご飯を
もってくるから
また
今度よ。
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