美月の帰り

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下町界隈 巳の刻 四京門の辺にて、シモンは嘆いていた。 長い紫苑の髪を振り乱し、警官風情の恰好を泥で汚し、ただワンワン泣いていた。 「嗚呼なんという事か!!」 地団太を踏み、歯軋りし唸る。 門を行き交う人はチラチラとシモンを見るも、こいつぁ狂人だ、かかわっちゃあいけねぇ、の知らん顔。 「何故こうも事は上手く進まないのかぁ!!」 犬も喰わん此の嘆きように、一人男が近付いた。 ざんぎり頭のハイカラ男で、身なりは良い。 階級が低い下町界隈には珍しい物ばかり。 男はある程度シモンに近付くと、屡観察。 人買いが娘を値踏みするかのように、頭の先から爪先まで、じぃーっと。
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