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「んん~流石は別れの四京門。男に捨てられた婦人の宝庫だねぇ」
嗚呼絶景かな、と扇子を取り出し扇ぐ。
かっかっかっ、と乾いた笑い声を上げた。
するとシモンは声を嗅ぎ付けたのか、嘆きの叫びがピタリと止んだ。
乱れ髪がなんとも悍ましい面で、男を凝視している。
「おやおやシモン君、そんなお顔をしなさんな。可愛いお顔が台なしだ」
まるで子供をあやすような口ぶりと、乾いた笑い声を上げた。
優しく、だが幼稚な言葉に、シモンはワナワナ震える。
怒りであろう。
「あ、ああああ貴方の所為でしょう!!あああ貴方の貴方の貴方の!!」
振り返したお嘆きの叫び。男を鋭く指差し、ワンワン叫んだ。
汚い言葉で罵り、ワンワン泣いた。
男は其れを面白がって笑うのみ。見物客のように。
犬も喰わない此の絶叫を、此の男は喰らうようだ。
「かっかっ、少ぉし僕が門にいないからって、そんなに悲しかったのかね?」
「な、ななななーにをおっしゃるか!!少しと言えど実際!!あっしは明け時から待っていたのですぞ叉之伍郎殿!!」
ああああ!!酷い神と仏の罰か!!
鬼か、畜生か、どちらにも似た面構えで睨んで泣いた。しかし涙と鼻水で塗れた面なものだから、脅威が無いったらありゃしない。
流行りの恋路話の一幕に似ていたが、其れにしては可成不格好過ぎた。
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