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「三輪……」
「もういいです、なんだか、一人舞い上がってたようで、つらい」
「なんだ、よ、それ」
「俺、少し考えます。片山さんも、考えてみてください」
「考えるって何をだよ」
「お互いの気持ち……かな」
三輪は辛そうな顔をして、俺を見つめると俺の目の前に弁当を突き出した。
「これ、せっかく作ったんで、でも片山さんがいらないなら、捨ててください」
「三輪……?」
三輪の意図がつかめない。
でも何か言わなければとあせって口を開こうとしたが、何を言っていいか解からず、結局名前を呼ぶだけ。
三輪はそんな俺に少しだけ笑顔を見せ、手に弁当を握らせると、屋上から出て行った。
俺はもう、何でこうなったか、三輪がどう思っているか、自分はどうしたいか、すべてがごちゃごちゃに渦巻いてて、そこからしばらく動けず、三輪をそのまま行かせてしまった。
予鈴が鳴っても動けず俺は、もんもんと、三輪の事を考えていた。
手には三輪の作った弁当。
それを開けると俺の好きなから揚げと、あんまり好きじゃない野菜類が入っていた。
いつも俺の身体を気にして、三輪の部屋へ行くと必ず野菜が出てきた。
この所作ってくれてる弁当も同様で、口では、不満を言ったけど、内心すごく嬉しかった。
三輪の愛情を感じられて。
さっきの話しの流れから、俺は三輪を傷つけたと思う。
で、三輪は自分の気持ちを考えると言った。
って事は、俺との関係を考えるって事だろうか?
なんだよ、この前、ずっと一緒にいるとか言ったのは、嘘かよ。
そう思ったら、泣けてきた。
くそ。三輪のあほ。
泣かせるなっ。
泣きながら食べた三輪の弁当は、それでも旨くて、また泣けた。
こんな泣き虫だっけか?俺。
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