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昼休みの屋上って、人が居ないものなんだ。
って、三輪と昼飯を食べにここに来て初めて知った。
そもそも、屋上に入れるのさえ、知らなかった。俺。
興味なかったしな。
でも、晴れた日の屋上って気持ちいいのな。
郊外の高台に立つ学校だから、屋上からは何の邪魔もなく、町が見える。
そよぐ風、ぽかぽか暖かい日差し。
かすかに聞こえる、昼休みのざわめき。
あぁ、いい気分なんだけどな~。
「片山さん」
怒った三輪が居なければ……。
現実逃避をしていた、俺の思考に割り込んできた三輪の声は、まだ少し、怒気を含んでいた。
先に屋上へ入った俺は、振り返って、三輪を見る。
冷笑を顔に貼り付けた三輪が目に入り、俺気持ちは益々落ち込んだ。
あ~。もう、なんで、あんな事くらいで、こいつはこんなになるんだ?
ちょっとじゃれてただけだ、つーのっ。
「片山さん」
もう一度そう言って、俺の頬に手を伸ばしてくる。
三輪の手に触れられた瞬間、身震いした。
触った手が冷たかったからだけじゃないのを、俺は自覚している。
「三輪……?」
「片山さん、俺の事、今怖いですか?」
「……怖くねぇ」
怖いかって聞かれたら、怖くないって言うしかねぇじゃん?
素直じゃないのも、怖がってるのも分かってんだろう?
だから、聞くな。
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