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俺は、すでに掴まれたようになっている頬の手をそのままに、三輪を睨みつけた。
目線がぶつかり、負けてなるものか、と睨み続けていると、三輪の雰囲気が変化するのが分かる。
さっきまでの、キレかけている雰囲気が和らいだような感じがした。
「素直じゃないなぁ、ま、片山さんらしいですけどね」
「……」
「俺、片山さんに質問あるんですけど」
「なんだ。……ってか、話しすんなら、手をどけろ。痛い」
「……いいでしょう」
三輪は、少し考えた後掴んでいた頬を離すと、そのまま俺の手を掴み、入り口の横の壁へと引っ張りこんだ。
そこは、誰か他に人が来たとしても視覚になる場所でもある。
「なんだよ」
「俺が何で怒ってるかわかります?」
俺から少し離れた場所に立ち、こちらを見ている三輪の顔はいつになく、真剣だった。
キレてる訳じゃないが、それは、それで、なんか怖い。
しかも、手にしているのが二人分の弁当で、それが三輪の手作りってのもある意味怖い。
男が男に手作り弁当って気持ち悪くねぇ?
「聞いてます?」
「あ、あぁ、や、あれだろ?橘とか佐藤とかとじゃれてたから」
「分かってるんですね」
ため息をついて、三輪は、弁当二つを持ったまま、一歩、二歩と、俺に近づいてくる。
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