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反射的に、俺は後ずさりした。
いや、現実には、後ずさりできなかったけど。
後ろが壁でこれ以上下がれなかったから。
「じゃ、なぜ片山さんが、あの人達とじゃれると俺が怒るか分かりますか?」
「……分かると思う。でもなお前のはいきすぎだろ?」
三輪が嫉妬してるってのは分かる。
でも、ただの友達に触られても別に意味なんてねぇじゃんか。
ふくれっつらで言う俺に、三輪は今日二度目のため息をついて、見つめてきた。
見つめてっていうより、睨んで?あれ、また怒ってんのか?
「じゃぁ、質問変えましょう。片山さん、俺が片山さん以外のやつとじゃれてんの見ても平気ですか?」
そう言われて、考えてみる。が、到底三輪のような感情は自分には理解出来なかった。
それが、迫られてるってんなら解かる。
さすがにそれは嫌だ、と思う。
でも、友達だろ?
友達同士がじゃれててなんで嫉妬なんかするんだ?
どうにかなる訳でもねぇーじゃん。
意味わかんねぇ。
なので正直にそう答えてみる。
「平気かも」
その言葉を告げた時、三輪はすごく悲しそうな顔をした。
俺の頭では理解できないけど、なにか、三輪を傷つけたみたいだった。
「三輪?」
不安になり、俺は近くにいる三輪に手を伸ばした。
同時に三輪は俺からすっと離れ、俺の手はむなしく空を掴む。
三輪に避けられ、俺の心臓はずきんと痛んだ。
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