動き出した歯車

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神主様は興味深げにフフッと鼻で笑って、いつもの小岩に腰掛けた。 まだ成太は来ていない。 「昨日、 書物庫へ行ったそうですね」 いつもと変わらない調子で話しだす神主様。 どうやら葵から全て聞いているようだ。 「石龍!石龍は どうやって呼ぶの!!」 猛が目を輝かせて聞くと、神主様は見るに絶えない格好に二 三度瞬きして答えた。 「それは私にも 解りません。」 猛はがっくりと肩を落とした。 「龍の喚(ヨ)び方は 選ばれし巫女にしか 解らないのです。」 「じゃあ!巫女に…」 神主様が人差し指を口に当てたサインを出して猛の発言を止めた。 「残念ながら 巫女には女性しか 選ばれません。」 猛は口を開けたまま更に肩を落とした。 その様子を見た蓮は肩で笑っていた。 「選ぶのも私達ではなく 龍が決めます。」 「龍が?」 葵は不思議そうに聞いた。 「そう。 龍から選ばれると、 体の何処かに 龍の紋様(モンヨウ)が 浮かぶのです。」 「龍の紋様?」 葵が更に聞くと神主様は静かに頷く。 「巫女の資格に 期限はありません。 どんなに年をとっていても 条件の揃った巫女の末裔なら 龍の紋様が浮かび、 そこで初めて束縛の儀式を 受ける事が許されます。 力は儀式を受けなければ 宿りませんからね。」 だんだん焦れったくなってきた。 巫女の儀式とか… 龍の紋様とか… 聞きたいのはそんな事じゃない。 僕は思い切って神主様に聞いてみた。 「そういえば、 この里に石龍が居るのは 本当ですか?」    
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