動き出した歯車

4/14
前へ
/162ページ
次へ
「そうですね‥ この神社には 名前がありませんが‥ 此所で祭っているのが 土龍神 石龍です。」 「え!? 御祖母様は此所は 菩薩様を祭ってるって 言ってたわ!! だって…」 葵は神社の前まで小走りで駆けていって神社を指差した。 「ちゃんと 菩薩様は居るじゃない!」 葵を追ってゆっくりと移動する神主様。 僕達も立ち上がって後に続く。 神主様は葵の隣に立って、菩薩様を見上げた。 「これは囮(オトリ)ですよ」 腕組みをすると、神主様につられて僕達は神社の横にみすぼらしくある、小さくて目立たない祠の前に来た。 大きな岩を抉(エグ)って作られた小さな祠。 今まできちんと見なかったからだろうか… 僕は一気に鳥肌が立った。 抉られた場所に黒くて丸い石が置いてある。 石には白い線が幾つも… そうだ… それは‥ 僕の持ってる石と同じ。 御影石。 その石には"龍の紋様"らしきものが彫られていた。 蓮は腕組みするとその石に近寄り、顔を近付ける。 僕はヒヤリとした。 だけど蓮は、「ふーん」と、鼻を鳴らすだけで、何も無かったように戻ってきた。 良かった…バレてない。 猛と葵も顔を近付けて見ていたけど、二人共気付いて無いようだった。 「これが龍の紋様です。 囮を作ったのは、 心の汚い人間達から 龍を守る為。 龍の力は絶大なだけに 悪用しようと 無理に龍の怒りに 触れる様な事をされては かないませんから。」 龍の紋様… それは不思議な紋様だった。 見た事も無い筈なのに 心に残って離れない。 その紋様が 何がを伝えている様で… でもその何かは なんだか解らなくて… 少し‥ 悲しい紋様だった。    image=51998156.jpg
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加