動き出した歯車

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僕は神主様を見上げながら、そんな事を考えては…ただじっと黙っていた。 石龍を祭る祠…御影石、龍の巫女、月陰、…戦。 …戦。 僕は戦を知らない。 前に蓮と二人で遊んでいた時に、落ち武者に出会った事がある。 それは、今思い出しても寒気がするくらい、凄く恐ろしかった。 血と泥まみれの顔… 足と肩に矢が刺さったまま地面を這ってた。 良く見ると…首を斬られてた。 化け物を見たようで… 怖くて… 僕達は動けなかった。 その落ち武者は、僕達に手を伸ばして… 何かを言おうとしてたんだろうけど… 喉から溢れる血で言葉にもならなかったみたい… 咳でも、呼吸でも無い喉の音… 見た事もない形相のまま、僕達の一歩前で… 死んだ。 僕達は解らなかったんだ。 "理解"は出来ても、僕達の心がそれを受け入れられなかった。 落ち武者の痛みも。 死に行く意味も。 …今もまだ全然解らない。 殺人兵器… その言葉の通り、ほんの少し想像は出来るけど…きっと多分、解らない。
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