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辺りが薄暗くなる頃、僕達は神社を後にした。
途中夕立が降ってきて、急いで里へ戻ると、なんだか里の人達の様子がおかしかった。
蓮の家の前に人だかりが出来ている。
『父様が帰って来たんだ!』
蓮は猛と顔を合わせて笑うと二人で掛けて行った。
僕と葵も後を追って人だかりを掻き分ける。
大人の腰辺りをたくさん押して、やっと真ん中に出た。
そこには、言葉無く立ち竦む蓮の姿。
「俺が見つけた時にゃ、
もう遅かったんだ…」
成太の父親が頭を抱えてうろたえていた。
泣き崩れるおばさん…
代わり果てたおじさんの姿…
「……あなた!
…あなた!…何してるの!
…起きて下さい!
早く!!ねぇ!!!」
おばさんは荷車に仰向けに寝ているおじさんを、何度も揺すった。
おじさんからの返事は無い。
おじさんの胸の辺りが真っ赤に染まっている。
「……ぅ‥おじ…さん‥
ぉっ…じ……さ……」
僕は足から力が抜けて行くのが解った。その場に膝を付いて、引付けを起こしながら、いつの間にか視界はぼやけてた。
「‥あなた!!!!
起きて!起きなさい!!」
おばさんはおじさんを引っ切り無しに叩いた。
「母様‥やめて!やめて!!」
猛がおじさんを叩くおばさんにしがみついて止めるけど、おばさんは猛を突飛ばしておじさんを叩いてた。
「‥あなた!
御願い…ねぇ!
目を覚まして!ねぇ!!!」
「母様!母様!
僕がいる!ねぇ、
僕が守るから!
ねぇ、だからやめて!
父様をぶたないで!」
おばさんに突き飛ばされた猛は僕の近くに転んだけど、必死でおばさんに抱き付いて、ようやく納まったおばさんを抱き締めた。
おばさんは声を上げて喚きながら、猛を抱き締めて泣いた。
いつも静かで、どんな時も冷静なおばさんの姿は、そこにはひとかけらも無くて、人だかりの目も気にせず、大声で泣いていた。
蓮は……表情変えないまま、その目からはたくさんの涙を流して、雨の中僅かにふるふると奮えていた。![image=54415237.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/54415237.jpg?width=800&format=jpg)
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