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数日後、追い討ちをかける様に、おばさんに都合の悪い不幸がやってきた。
町のおじさんの一件で、里に兵が二人やってきた。
それまで余所者(ヨソモノ)の立ち入らなかった里は、平穏にひっそりと暮らしていたけど、町の一件に目を光らせた目付役が見張り役として里に兵をよこした。
当然里の人達はそれを快く思う筈が無い。
見張り役は里の直ぐ近くに小屋を立てて一日中里を見張って、時々里の人を不条理にからかった。
おばさんは里の人達から白い目で見られる様になった。
猛は以前より増しておかしな行動をとるようになった。
一日中森で叫んでは声を枯らし、たまに神社へ行くと祠にぶつぶつ話しかけた。
挙句の果てには、何処からか鍬(クワ)を持ち出して自分の腕や足を引っ掻いて傷だらけにしていた。
それには蓮も黙っておらず、何処へ行くにも猛に付いて回っては、その行為を止めていた。
ある雨の夜中、誰かが部屋を出て行く音で、僕は起きた。
辺りを見回すと、猛の姿が見あたらない。
僕は蓮を起こして外へ出た。
そこで目にしたのは猛の悲惨な姿だった。
「ァーーーーーーーー!!」
「キャーーーーーーーー!!」
猛が甲高い叫び声を上げて、雨の中素っ裸で庭を飛び跳ねながら走り回って居た。
「キャーーーーーーーー!!」
「ァーーーーーーーー!!」
蓮と僕は目を丸くして固まった。
僕は猛を止めに行く。
「‥猛ッ!?猛ッッ!!!
止めるんだ!!猛ッッ!!」
「猛!!止めろ!!」
蓮も後に続く。
僕と蓮が腕を掴んでも振りほどいては勢い良く駆け回り逃げる。
すると蓮はぬかるみに足を挫いて転んでしまった。
どうやら打ち所が悪い様で、額を石にぶつけて少し血を流している。
その間に猛は里の入口に向かって歩き出した。
「‥行け!!小二郎、
猛を止めるんだ!!」
蓮が額を抑えながら、片目で僕に訴える。
僕は猛を追った。
成太の家の数歩手前で猛を掴まえた。
「帰ろう!!猛ッ!
風邪引くぞ!」
「ィャーーーーーーーー!!」
「猛!御願いだから!
母様が心配する!」
猛は暫く泣いてもがいたけど、猛を抱き締めて錘(オモリ)なるように止めたら、ようやく落ち着いた。
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