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猛を家に連れて帰ると、おばさんは起きていて、凄い勢いで玄関まで飛んで来た。
「猛!!猛!!」
僕も猛も雨に濡れてビショビショだったけど、おばさんは猛を真っ先に抱え上げて抱き締めた。
「なんて格好なの!?
こんなに濡れて……」
おばさんは泣いていた。
猛は寒さでその小さな体を震わせていて、僕はその場に突っ立ったまま、おばさんを見上げていた。
「猛……なんて酷い事!?
……小二郎、
お母さん貴方に
言ったわよね!!
猛を守ってあげて頂戴って!」
…確かに、おじさんの御葬式が終わった後に蓮と僕がおばさんに約束した事だった。
「…母様、僕…」
「貴方を信じてたのに!!
猛にこんな事するなんて…
出て行きなさい!!」
僕は固まった。
「母様…小二郎は僕を…」
「喋らないで喋っちゃ駄目。
こんなに熱があるじゃない、
直ぐに暖めてあげるからね」
おばさんは猛を自分の着物で拭いながら猛の頭を撫でた。その様子を見て蓮も何度かおばさんに話しかけたけど、発狂したおばさんに黙らされた。
「まだそこに居たの?!
早く行きなさい!!
………早く!!!!
出ていけ!!!!!」
おばさんは雨の酷くなった外を指差して、物凄い形相で怒鳴った。
僕は一目散に家を出た。
胸の中の悲しさと、悔しさと、怒りを、全部纏めて叫んで泣いた。
「みんな居なくなればいい!」
「僕は何も要らない!!」
「消えてなくなれ!!」
「ア゛ーーーーーー!!」
僕には何処にも行く当てが無かった。
僕が向かったのは…
葵の家。
葵は目の不自由な祖母と二人で暮らしていた。
僕が玄関を叩くと、寝間着姿の葵が出て来た。
「小二郎…
びしょ濡れじゃない、
どうしたの?
……上がって。」
僕の姿を見た葵は、少しびっくりしていたけど、黙り込む僕を落ち着いて家に上げてくれた。
奥には大きな布団が敷いてあって、その端にお祖母さんが寝ていた。
「葵…誰なんだい?」
お祖母さんは、目を閉じたまま腕を少し上げて、しゃがれた声で葵に聞いた。
「友達。」
「こっちへいらっしゃい」
お祖母さんが手を差し延べて僕を呼んだ。
「大丈夫。目は見えないの。
その代わりに、触れると
人の気持ちが解るみたい。」
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