動き出した歯車

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「…小二郎!! 猛が大変なんだ! 早く!早く来てくれ!」 蓮は葵に構わず叫んでいる。 「母様に頼まれたんだ! 小二郎に謝りたいって… とにかく!猛も呼んでる! 猛の傍に行ってやってくれ! ………頼む!! ……絶対来いよ!」 それだけ言って、蓮は駆け足で帰って行った。 僕は、おばさんよりも何よりも、猛が心配になった。 猛はあれで結構体が弱い。小さくて細っこい体だからか、昔から良く大きな風邪を引く度に肺炎等余計な病も一緒に起こしてしまう。 僕と葵は、直ぐに猛の元に向かった。 家に着くと、おばさんが静かに近付いて来て、僕の両肩に手を置いた。 「小二郎ちゃん… 昨日はごめんなさい…。」 おばさんはまた泣いていた。 おばさんが僕の背を寝床の方へと押して、僕は弱々しく仰向けに寝て居る猛の横に座った。 向い側に蓮も居る。 猛は青白くなった顔で、瞬きをゆるり、ゆるりとしている。 「小二郎…良かった。 来てくれたんだね。」 弱々しい顔でニッコリと笑う猛は、今にも死んでしまいそうな程、声が小さかった。 「猛…」 僕は何て話しかけていいのか解らなかった。 「母様…ゴホンッ… …約束だよ… ゴホンッ僕達…だけにして」 おばさんは口を手で覆いながら、コクコク、と頷いて、部屋を出て行った。 「小二郎…お兄ちゃん… ゴホンッ…葵…僕のお願い… 聞いてくれる…?」 「何だよ、お願いって!」 蓮が眉間に皺を寄せる。 「ゴホゴホッッゴホンッ! 僕が沢山傷付いて… それを…我慢したら… ゴホゴホッッ… …龍は僕を…選んで、 くれるから…ゴホンッ …だから、僕を 月陰だって…言って、 見張りの兵に…言って。 …………………… ねぇ…聞くって、言って。 約束して…」 また意味の解らない事を言い出すのは解ってた。 でも、ここで猛に気を弱く持たせる事は、僕達には出来なかった。 「約束するよ。」 蓮は真剣な顔をして猛の手を取った。 これが… 僕達の運命を大きく変える事になるなんて… この時は誰も予想していなかった…。        
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