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里を抜ける途中、なんだか里中が騒がしい気がしたけど、僕達にはそんなことに構ってる暇は無かった。
思えばその日から、僕達の日常は狂い始めていたんだ…。
隣町…一番大きな屋敷…
そこに行けば、きっと何かが解る気がした。
蓮や猛の事…
石龍と龍の巫女の事…
僕が何者で
何故ここに居るのかも…
「小二郎、もっと早く!」
先に行く葵は僕を急かした。
隣町と言っても、森に囲まれた里からは大人でも半日掛かるくらい遠い。
前に蓮が隣町に行った時は、恐らく里に来て居た旅人の馬にでも乗せて貰ったんだろう。
暗くなると道が解らなくて、きっと森に迷ってしまう。
とにかく急がなければいけなかった。
葵は僕より早いから、一生懸命走るけど、背中に錘(オモリ)の様にぶら下がった刀が重くて、上手く走れない。
やっと町に付いた時には、もう日も暮れた後だった。
幸い里と違って町の中には幾つか明かりが点っていたので、町を迷わずにはすんだ。
僕達は既に疲れきっていて、ヨロヨロとした足取りで町を歩く。
暗くて助かった。
刀を背負った僕は日中なら特に目立ったと思う。
「…葵、少し…休もう。」
走り続けておかしくなりそうな僕の体はもう限界で、その場にぺたんと座り込んだ。
「…そうね。」
僕だけじゃない。
葵も相当疲れていた。
座り込む僕の前にしゃがんで辺りを見回す葵。
「里とは全然違うね…」
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