御神木の里

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僕は御影石を握り締めて里に戻った。 里の入口の柵に凭れかかって遠くを見つめ、暇を潰していたらしい男の子が、こちらに気付いて走りよって来た。一緒に居た小さな男の子も後を追ってやってくる。 「小二郎、 お前も物好きだな。」 ニヤリと嫌味たらしく笑うのは、僕の一つ上の蓮(レン)。遅れて蓮の隣に立ち、無垢な眼差しでこちらを見上げるちっこいのが、まだ四才の猛(タケル)。 「どう言う意味よ!」 僕と一緒に出っ張り岩から帰って来た、彼女は葵(アオイ)。 一歩前に出て蓮に食いかかる。葵は四人の中で一番背が高い。 「お前と出歩くなんて よっぽど暇だったんだろ なぁ?小二郎」 「楽しかったわよ! 解ったわ、 羨しいんでしょう、 蓮となんかいくら暇でも 一緒に居て あげないんだから!」 「大いに有り難いね。 女なんかと 一緒に居るぐらいなら 寝てた方がましさ!」 僕が答える前に葵が答えてしまったので、返事を考える手間が省けた。 葵はフイと髪を靡かせて里へと歩きだす。僕達は一度顔を見合わせて、葵の後に続く。 蓮と葵は、衝突が絶えない。でもこれは日常茶飯事で、言い合いが終わると不思議なくらい自然になる。蓮が女嫌いなのもあって、お互い啀み合っているけど、いつも一緒に遊ぶ仲間の一人だ。 僕達四人は無言のまま同じ場所へ向う。 里の一番奥に御神木がある。その隣に小さな祠と神社が建っている。 "神主様"は、そこで御神木と祠を守ってくれてる。 僕達は、境内に入ると、鳥居の前で掃き掃除をしている神主様に駆け寄った。 「おはよう御座います 神主様」 「ああ、君達か、おはよう」 僕達は毎日神社に通った。 神主様は若くて、他の大人とは全く違っていた。
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