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神主様の秘密
葵が僕の手を引いて、僕達は神社に向かった。
僕達にはもう、神主様しか頼れる人が居なかった。
賽銭箱の前の石階段に座って、僕達は神主様に全てを話した。
――――――…
「そうですか…」
神主様は頭を撫でて抱き締めてはくれなかった。
普通の大人のする事をしないのがこの人。
一瞬悲しそうな顔をしていたけど、いつもと変わらない神主様になんだか凄く安心して、僕達はまた啜りながら泣いていた。
「いいですか、
泣いても構いませんが、
そんな場合では無い事を
解りますね?」
僕達は嗚咽(オエツ)を堪えながら涙を拭いて頷いた。
「隣町の北に、
一番大きな屋敷があります。
そこで"舞代(マシロ)"という
女性を尋ねなさい。
門番に道を塞がれたら、
陰法師月代(ツキシロ)の名を
出すのです。
いいですね?」
僕達は黙って神主様に頷く。
「それから…」
神主様は社(ヤシロ)から一本の刀と御影石で出来た勾玉(マガタマ)を持って来て、刀を僕の背に、勾玉を葵の首に掛けた。
「これを持って行きなさい。
使い方は時期がくれば
必ず解ります。
これが貴方達を
守ってくれる事でしょう。」
刀は背中にずっしりと重くて、まだ九つの僕には、大き過ぎてとても使いこなせそうになかった。
葵は首に下がった勾玉を触って、不思議そうに見て居た。
「貴方達には
土龍神がついています。
この先何が起こっても、
…信じるのです。」
神主様はそれだけ言うと、僕達一人一人を真っ直ぐ見た。
僕と葵は顔を見合わせて、決意を決めると、隣町へ向かって走り出した。
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