【第一章】 サムライとお嬢様

6/8
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「な、なに……よ」 高く透き通った声が耳に届いた。振り向けば、そこには座り込み、泣きそうな表情の少女がいた。 美しく伸びた栗色の髪。細く華奢な体。そして見たこともない服(やけにヒラヒラしている)。 「今の……なによ……私は、別荘に行こうとしただけなのに…」 弱々しく少女は言った。 「…リクト……この娘は?」 「人間だよ」 「カっ、カラスがしゃべって…!?」 どうやら完全に混乱しているようだ。俺は少女に近づこうと一歩踏み出した。すると少女はビクリと肩を震わせた。 あぁ、刀か。俺は鞘に刀を納め、再び少女に近づいた。 「……落ち着け」 「……あんな光景を見せておきながら、よくそんなことが言えたものですわね…」 少女は大樹を支えにして立ち上がると、俺を睨んだ。立ち振る舞いに気品を感じる。 「貴方のような野蛮な者でも、話は通じるのでしょう?私の使用人を見掛けませんでした?」 「あぁ、そのことだけど」 リクトが俺の肩に乗った。少女はまだ少し警戒しながらリクトに目を向けた。 「君以外来ていないよ、この世界には」 「………え?」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!