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「な、なに……よ」
高く透き通った声が耳に届いた。振り向けば、そこには座り込み、泣きそうな表情の少女がいた。
美しく伸びた栗色の髪。細く華奢な体。そして見たこともない服(やけにヒラヒラしている)。
「今の……なによ……私は、別荘に行こうとしただけなのに…」
弱々しく少女は言った。
「…リクト……この娘は?」
「人間だよ」
「カっ、カラスがしゃべって…!?」
どうやら完全に混乱しているようだ。俺は少女に近づこうと一歩踏み出した。すると少女はビクリと肩を震わせた。
あぁ、刀か。俺は鞘に刀を納め、再び少女に近づいた。
「……落ち着け」
「……あんな光景を見せておきながら、よくそんなことが言えたものですわね…」
少女は大樹を支えにして立ち上がると、俺を睨んだ。立ち振る舞いに気品を感じる。
「貴方のような野蛮な者でも、話は通じるのでしょう?私の使用人を見掛けませんでした?」
「あぁ、そのことだけど」
リクトが俺の肩に乗った。少女はまだ少し警戒しながらリクトに目を向けた。
「君以外来ていないよ、この世界には」
「………え?」
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