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「だから、ここにはいないよ。君以外の人間は」
「……どういう、こと?」
少女の顔色が青ざめていく。俺はこの日何度目かのため息をついた。重い口を開き、俺を少女を追い込む言葉を口にする。
「何度もリクトが言っているだろう。………人間はお前だけだ」
ぺたり。せっかく立ち上がったのに、少女は再び座り込んでしまった。
「ここは、人間のいるべき場所ではない。忘れさられた箱庭(世界)なのだから」
「い、意味が分かりません!そんな唐突で現実離れしたことなんて……!それに、貴方は人間ですわ!」
「……違う」
俺は刀を掴み、はっきりと言った。
「で、ミカゼはどうするんだい?この子」
「……俺は掟に縛られている。自由だが、この娘を助けるには…」
俺が最後まで話さぬうちに、少女は立ち上がり、服の汚れを払った。そして凛とした表情で俺を見つめる。それは気高く誇り高いもので、強い人間の魂の輝きにも似ていた。思わず息を飲む。
「貴方に迷惑をかけるつもりはありませんわ。助けてくださったことは感謝します。それでは…」
「お待ち下さい!」
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