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思わず自分の口から出た敬語に、俺は驚き手で口を押さえた。少女も俺同様驚いたようで、大きな瞳を真ん丸くしてこちらを見ている。
「え……?」
「……っお前!」
「は、はい!?」
顔が熱くなる。
「名は何だ!」
「え……アリア、ですが…」
俺はアリアの左手を掴み、跪き(ひざまずき)目を瞑る。アリアが慌てているのが気配でわかる。アリアの左手の甲に、俺の右手の甲を重ねた。
「我、ミカゼはアリアに忠誠を誓う。アリアの為ならば死すらも恐れぬことを」
「…あ、あの……?」
俺はすぐに立ち上がり、アリアの手を引いた。アリアは何か言っているようだが、今の俺には何も聞こえない。
「どういうこと…?」
「良かったね、アリア」
「え?」
「ミカゼは君を、主人だと決めたみたいだよ。これで掟が守られるわけだね」
見えないピリオドを追って、僕らは灰色の世界に辿り着いた。優しくも残酷な場所に、同情はない。
さぁ、歩こう。終焉への道を。
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