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「依斗」
依斗の住む木に降り立つ。この木はこの世界が出来た時からあるものだから、その大きさは他の木と比べものにならない。美しく壮大な木に、ひっそりと姿を現したのは、この木に釣り合うほど綺麗な烏だった。
「リクトか……。相変わらず時間ピッタリだね」
「そりゃ、後で依斗が煩いから」
「ふん。ところで、あの人間は生きているかい?」
あの人間、って言うのはアリアのこと。実はアリアを最初に見つけたのは依斗だったりする。ま、すぐに僕に伝えてくれたんだけど。
「生きてるよ。ミカゼがちゃーんと面倒みてると思うし」
「ミカゼ、ねぇ…」
依斗はミカゼが嫌いだ。何故かは僕にもわからないけど、ミカゼの話をするといつも目を合わせてくれない。そして最後にはお決まりの台詞が出てくるんだ。
「あんなサムライもどき、さっさと成仏すればいいのに」
……―――こんな風に。
「サムライもどきなんて言ったら可哀想だよ。ミカゼは芯からサムライなのに」
「……知らない。それより、僕は人間に興味があるなぁ」
そうして僕は、リクトにアリアの事を昼まで延々と話すことになった。
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