【第二章】 烏と世界

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ふと空を見上げると、先程までの蒼い空は半分まで隠れていた。 「そんな馬鹿な…」 思わず呟く。だってこの湿気は、この雰囲気は、この香りは。雨の前兆だってすぐわかったから。 この世界に、雨が降る? それこそ歯車が狂ったのだろうか?曇りなんて、今までなかった。雨なんて有り得ない。この世界の理を無視して、起こそうとするのだから、発生源は明確すぎる。 「アリア。早く上がった方がいいよ」 「?……わかりましたわ」 この世界は止まった筈。もう終わりは迎えられない筈なのに、どうして今更そんなに悲しむ?どうして動き出してしまった? 「これは、早く手を打たないと」 取り返しのつかないことになる前に、世界を止めなければ。 ピリオドを打たなければ。 僕と彼と貴方が愛した世界が、消えてしまうその前に。
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